秋はなほ残り多かる年なれど
今宵の月の名こそ惜しけれ
- 歌の意味
-
秋はまだ多く残っている年だけれども、今夜の月の、名月という名こそ惜しまれることだ。
- 鑑賞
-
巻第三 秋歌 186
秋の日々はまだ多く残っているけれども、名月と呼ばれるのは今夜の月だけなので、その名が惜しまれる、と詠む歌である。秋はまだ続いても、十五夜という特別な夜は一夜限りであることを惜しんでいる。
本巻の第百七十四首から第二百十七首までは月の歌が長く続き、夕月夜から八月十五夜の名月、有明の月まで、さまざまな月のありさまと月を見る心が詠まれていく。
作者の「公実」は、藤原実季の子で権大納言に至った藤原公実である。春宮大夫を兼ねた。堀河天皇の時代の歌壇で活躍した歌人である。
初句「秋はなほ」は秋はまだの意である。
二句「残り多かる」は残りが多いの意で、秋の日々がまだ多く残っていることをいう。
三句「年なれど」は年であるけれどもの意の逆接で、下の句の惜しむ心へと転じている。
四句「今宵の月の」は今夜の月ので、八月十五夜の名月を指している。
結句「名こそ惜しけれ」は名こそ惜しいの意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。名月という名が今夜限りであることを惜しんでいる。
な:名、評判
- 作者
-
藤原公実
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
さやけさは思ひなしかと月影を 今宵と知らぬ人に問はばや
- 次の歌
-
雲の波かからぬさ夜の月影を 清滝川に映してぞ見る