松が根に衣かたしき夜もすがら
眺むる月を妹見るらむか
- 歌の意味
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松の根もとに衣の片袖を敷いて独り寝をし、一晩じゅう眺めているこの月を、妻も見ているだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 211
旅の途中、松の根もとに衣の片袖を敷いて独り寝をしながら一晩じゅう眺めている月を、都にいる妻も同じように見ているだろうか、と思いやる歌である。離れた人と同じ月を見ているという思いによって、旅の孤独と妻への思慕を表している。
本巻の第百七十六首、第百七十九首と同じく旅寝の月を詠み、同じ月を通して離れた人を思う心は本巻の第百八十二首とも響き合っている。
本巻の第百七十四首から第二百十七首までは月の歌が長く続き、夕月夜から八月十五夜の名月、有明の月まで、さまざまな月のありさまと月を見る心が詠まれていく。
作者の「顕季」は、藤原隆経の子で修理大夫に至った藤原顕季である。母が白河天皇の乳母であったことから院の近臣として重んじられた。和歌の家である六条藤家の祖である。
初句「松が根に」は松の根もとにの意で、野宿する旅の寝所を示している。
二句「衣かたしき」の「かたしく」は衣の片袖を敷いて独り寝をする意である。
三句「夜もすがら」は一晩じゅうの意である。
四句「眺むる月を」は物思いにふけりながら眺める月をの意である。
結句「妹見るらむか」の「妹」は妻や恋人を親しんで呼ぶ語で、「らむ」は現在推量の助動詞、「か」は疑問の終助詞である。
かたしく:衣の片袖を敷いて独り寝をする
いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
ながむ:物思いにふけりながらぼんやり見やる
- 作者
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藤原顕季
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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世とともに曇らぬ雲の上なれば 思ふことなく月を見るかな
- 次の歌
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眺むれば覚えぬことも無かりけり 月や昔の形見なるらむ