眺むれば覚えぬことも無かりけり
月や昔の形見なるらむ
- 歌の意味
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月を眺めていると、思い出されないことは何もなかった。月は昔の形見なのだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 212
月を眺めていると、昔のことが次々と思い出されて、思い出さないことは何もない、月は昔をしのぶ形見なのだろうか、と詠む歌である。月を見ることが過去を呼び起こすという懐旧の情を表している。
伊勢物語の、月も春も昔のままではないのかと嘆く在原業平の歌を思わせる懐旧の歌である。「形見」の語は本巻の第二百五十五首にも用いられている。
本巻の第百七十四首から第二百十七首までは月の歌が長く続き、夕月夜から八月十五夜の名月、有明の月まで、さまざまな月のありさまと月を見る心が詠まれていく。
初句「眺むれば」は月を眺めているとの意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。
二句「覚えぬことも」は思い出されないこともの意である。
三句「無かりけり」はなかったことだの意で、詠嘆の「けり」で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「月や昔の」は月は昔のの意で、係助詞「や」が結句の「らむ」と係り結びをなす。
結句「形見なるらむ」の「形見」は過去をしのぶよすがとなるもので、形見なのだろうかと推し量っている。本巻の第二百五十五首にも「形見」の語がある。
おぼゆ:思い出される
かたみ:過ぎ去ったことや人をしのぶよすがとなるもの
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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松が根に衣かたしき夜もすがら 眺むる月を妹見るらむか
- 次の歌
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もろともにいつとはなしにありあけの 月のみ送る山路をぞ行く