有明の月もあかしの浦風に
波ばかりこそよると見えしか
- 歌の意味
-
有明の月も明るい明石の浦風の中で、寄せる波だけが、夜であると見えたことだ。
- 鑑賞
-
巻第三 秋歌 216
有明の月が明るく照らす明石の浦では、昼のように明るく、浦風に寄せる波だけが夜であることを思わせた、と詠む歌である。地名の明石に月の明るさを、波が寄るに夜を重ねた技巧の歌である。
明石は本巻の第百七十九首、第二百八首にも詠まれる月の名所である。本歌で有明の月の歌が終わる。
本巻の第百七十四首から第二百十七首までは月の歌が長く続き、夕月夜から八月十五夜の名月、有明の月まで、さまざまな月のありさまと月を見る心が詠まれていく。
初句「有明の」は夜明けまで空に残る有明の月をいう。
二句「月もあかしの」の「あかし」は、播磨の歌枕の明石と、月が「明かし」、明るい意とを掛けた掛詞である。
三句「浦風に」は海辺を吹く風にの意である。
四句「波ばかりこそ」は波だけがの意で、係助詞「こそ」が結句の已然形「しか」と係り結びをなす。
結句「よると見えしか」の「よる」は、波が「寄る」意と、「夜」とを掛けた掛詞である。月が明るく昼のようなので、寄せる波だけが夜を思わせたことをいう。
あかし:播磨の歌枕の明石に、明るい意の「明かし」を掛ける
よる:波が「寄る」意と、「夜」を掛ける
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
山里の門田の稲のほのぼのと 明くるも知らず月を見るかな
- 次の歌
-
嵐をや葉守の神もたたるらむ 月に紅葉の手向けしてけり