古典和歌stream

露しげき野辺にならひてきりぎりす
我が手枕の下に鳴くなり

歌の意味
露の多い野辺に慣れ親しんでいるので、きりぎりすは、涙に濡れた私の手枕の下で鳴いているようだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 218

 露の多い野辺に住み慣れたきりぎりすが、涙に濡れた私の手枕の下に来て鳴いているようだ、と詠む歌である。涙で濡れた袖を露の野辺に見なし、虫が寄ってくるほど泣き濡れている独り寝の悲しみを、間接的に表している。
 本巻の第二百十八首と第二百十九首は虫の歌で、月の歌群の後、秋の夜に鳴く虫へと景物が移っている。
 作者の「待賢門院堀河」は源顕仲の娘で、待賢門院に仕えた女房歌人である。はじめ前斎院令子内親王に仕えて六条と呼ばれた。上西門院兵衛の姉で、小倉百人一首にも歌が入っている。

 初句「露しげき」は露の多いの意で、涙に濡れた袖を暗示している。
 二句「野辺にならひて」の「ならふ」は慣れ親しむ意で、露の多い野辺に慣れての意となる。
 三句「きりぎりす」は今のこおろぎを指すとされる秋の虫である。
 四句「我が手枕の」の「手枕」は腕を枕にして寝ることで、独り寝を思わせる。
 結句「下に鳴くなり」の「なり」は音声による推定の助動詞で、鳴いているのが聞こえるの意である。

きりぎりす:今のこおろぎを指すとされる秋の虫
たまくら:腕を枕にして寝ること
ならふ:慣れ親しむ
作者
待賢門院堀河
出典
金葉和歌集
前の歌
嵐をや葉守の神もたたるらむ 月に紅葉の手向けしてけり
次の歌
ささがにの糸引きかくる草むらに 機織る虫の声ぞ聞こゆる