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ささがにの糸引きかくる草むらに
機織る虫の声ぞ聞こゆる

歌の意味
蜘蛛が糸を引きかけている草むらで、機を織る虫の声が聞こえることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 219

 蜘蛛が糸を張りめぐらしている草むらから、機を織るような虫の声が聞こえてくる、と詠む歌である。蜘蛛の糸と機織りとを取り合わせ、糸を張る蜘蛛のそばで機を織る虫が鳴くという、おもしろみのある秋の野の景を描いている。
 「ささがにの糸」は本巻の第二百三十六首にも詠まれ、そこでは藤袴のほころびと取り合わされている。
 本巻の第二百十八首と第二百十九首は虫の歌で、月の歌群の後、秋の夜に鳴く虫へと景物が移っている。

 初句「ささがにの」の「ささがに」は蜘蛛のことで、二句の「糸」を導いている。
 二句「糸引きかくる」は糸を引きかけるの意で、蜘蛛が巣を張るさまをいう。本巻の第二百三十六首にも「ささがにの糸」が詠まれている。
 三句「草むらに」は草の茂った所にの意である。
 四句「機織る虫の」の「機織る虫」は機を織る音のように鳴く虫で、きりぎりすなどを指すとされる。「糸」「機織る」は縁語の関係にある。
 結句「声ぞ聞こゆる」は係助詞「ぞ」を受けて連体形「聞こゆる」で結ぶ係り結びである。

ささがに:蜘蛛
はたおるむし:機を織る音のように鳴く虫
出典
金葉和歌集
前の歌
露しげき野辺にならひてきりぎりす 我が手枕の下に鳴くなり
次の歌
玉章はかけて来たれど雁がねの うはの空にも聞こゆなるかな