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玉章はかけて来たれど雁がねの
うはの空にも聞こゆなるかな

歌の意味
手紙を翼に掛けて来たけれども、雁の声は、上の空で、うわの空にも聞こえることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 220

 雁は手紙を翼に掛けて運んでくると言われるが、その声は空の高い所から、心ここにないうわの空のように聞こえる、と詠む歌である。雁が便りを運ぶという故事を踏まえ、待つ便りが届かないもどかしさを、雁の声の遠さに重ねている。
 雁が手紙を運ぶ雁の使いの故事は、漢の蘇武が雁の足に手紙を結んだという話に基づく。
 本巻の第二百二十首と第二百二十一首は雁の歌で、空を渡る雁の声が詠まれている。

 初句「玉章は」の「玉章」は手紙のことで、雁が運ぶ便りをいう。
 二句「かけて来たれど」は翼に掛けて来たけれどもの意の逆接である。
 三句「雁がねの」の「雁がね」は雁の鳴き声、また雁そのものをいう。
 四句「うはの空にも」の「うはの空」は、空の高い所の意と、心が落ち着かずうわの空である意とを掛けた掛詞である。
 結句「聞こゆなるかな」の「なる」は推定の助動詞「なり」の連体形で、聞こえるようだの意となる。終助詞「かな」で詠嘆している。

たまづさ:手紙、便り
かりがね:雁の鳴き声、また雁
うはのそら:空の高い所の意と、心が落ち着かない意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
金葉和歌集
前の歌
ささがにの糸引きかくる草むらに 機織る虫の声ぞ聞こゆる
次の歌
妹背山峰の嵐や寒からむ 衣かりがね空に鳴くなり