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妹背山峰の嵐や寒からむ
衣かりがね空に鳴くなり

歌の意味
妹背山の峰を吹く嵐が寒いのだろうか。衣を借りたいと、雁が空で鳴いているようだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 221

 妹背山の峰を吹く嵐が寒いのだろうか、雁が衣を借りたいと言うように空で鳴いている、と詠む歌である。「かりがね」に衣を借りる意を掛け、寒さに鳴く雁の声をおもしろく描いている。
 前歌の第二百二十首と並んで雁の声を詠み、二首で雁の歌をなしている。
 本巻の第二百二十首と第二百二十一首は雁の歌で、空を渡る雁の声が詠まれている。
 作者の「公実」は、藤原実季の子で権大納言に至った藤原公実である。春宮大夫を兼ねた。堀河天皇の時代の歌壇で活躍した歌人である。

 初句「妹背山」は紀伊の歌枕で、紀の川を挟んで妹山と背山が向かい合う。
 二句「峰の嵐や」は峰を吹く嵐がの意で、係助詞「や」が三句の「む」と係り結びをなす。
 三句「寒からむ」は寒いのだろうかの意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「衣かりがね」の「かり」は、衣を「借り」の意と、「雁がね」の「雁」とを掛けた掛詞である。寒さのために衣を借りたいと雁が鳴くという趣向である。
 結句「空に鳴くなり」の「なり」は音声による推定の助動詞で、空で鳴いているのが聞こえるの意である。

いもせやま:紀伊の歌枕。妹山と背山が向かい合う
かりがね:衣を「借り」の意と、「雁がね」を掛ける
作者
藤原公実
出典
金葉和歌集
前の歌
玉章はかけて来たれど雁がねの うはの空にも聞こゆなるかな
次の歌
妻恋ふる鹿ぞ鳴くなるひとり寝の とこの山風身にやしむらむ