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夜半に鳴く声に心ぞあくがるる
我が身は鹿の妻ならねども

歌の意味
夜中に鳴く鹿の声に、心がさまよい出てしまう。私の身は鹿の妻ではないけれども。
鑑賞
巻第三 秋歌 224

 夜中に鳴く鹿の声を聞くと、心が引き寄せられてさまよい出てしまう、自分は鹿の妻ではないのに、と詠む歌である。妻を呼ぶ鹿の声に、呼ばれた妻でもないのに心ひかれてしまうという、おかしみを含んだ表現で鹿の声のあわれを表している。
 「あくがる」の語は本巻の第百八十九首にも用いられ、そこでは月を見て心がさまよい出ると詠まれている。
 本巻の第二百二十二首から第二百二十六首までは鹿の歌が続き、妻を恋うて鳴く鹿の声に、旅や独り寝のわびしさなど、さまざまな心が寄せられていく。

 初句「夜半に鳴く」は夜中に鳴くの意で、鹿の声をいう。
 二句「声に心ぞ」は声に心がの意で、係助詞「ぞ」が三句の連体形「あくがるる」と係り結びをなす。
 三句「あくがるる」は心が体から離れてさまよい出るの意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。本巻の第百八十九首にも同じ語がある。
 四句「我が身は鹿の」は私の身は鹿のの意である。
 結句「妻ならねども」は妻ではないけれどもの意で、鹿が呼ぶ妻でもないのに心ひかれることをいう。

あくがる:心が体から離れてさまよい出る
出典
金葉和歌集
前の歌
思ふことありあけ方の月影に あはれを添ふるさを鹿の声
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さもこそは都恋しき旅ならめ 鹿の音にさへ濡るる袖かな