古典和歌stream

佐保川の汀に咲ける藤袴
波のよりてやかけむとすらむ

歌の意味
佐保川の水際に咲いている藤袴を、波が寄せてきて、より合わせた糸で掛けようとするのだろうか。
鑑賞
巻第三 秋歌 234

 佐保川の水際に咲いている藤袴に波が寄せるのを、波が袴を掛けようとしているのだろうか、と見立てた歌である。花の名の「袴」にちなみ、波が寄ることに糸をよる意を重ね、衣を掛ける趣向でおもしろく描いている。
 本巻の第二百三十四首から第二百三十六首までは藤袴の歌が続き、袴という名にちなんで、掛ける、着る、ほころぶなど衣にかかわる語で詠まれている。

 初句「佐保川の」は奈良の佐保川で、本巻の第二百四首にも詠まれている。
 二句「汀に咲ける」は水際に咲いているの意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「藤袴」は秋の七草の一つで、その名の「袴」から衣に見立てて詠まれる。
 四句「波のよりてや」の「より」は、波が「寄り」の意と、糸を「縒り」の意とを掛けた掛詞で、「袴」と縁語の関係にある。係助詞「や」が結句の「らむ」と係り結びをなす。
 結句「かけむとすらむ」は掛けようとするのだろうかの意で、袴を掛けることに見立てている。「らむ」は現在推量の助動詞である。

ふぢばかま:秋の七草の一つ。淡い紫色の花をつける
よる:波が「寄る」意と、糸を「縒る」意を掛ける
出典
金葉和歌集
前の歌
女郎花夜の間の風に折れ伏して 今朝白露に心おかるな
次の歌
かりに来る人も着よとや藤袴 秋の野ごとに鹿のたつらむ