- 歌の意味
-
鶉の鳴く真野の入り江を吹く浜風に、尾花が波のように寄せては揺れる秋の夕暮であることよ。
- 鑑賞
-
巻第三 秋歌 239
鶉の鳴く真野の入り江の浜辺で、浜風に吹かれて尾花の穂が波のように揺れ寄せる、秋の夕暮の景を詠む歌である。鶉の声、浜風、尾花の波と、耳と目でとらえた景物を重ね、寂しくも美しい秋の夕暮を描いている。
撰者である作者の叙景歌の代表作として知られ、後の新古今時代の歌人にも高く評価された。真野は本巻の第二百二十九首にも詠まれている。
本巻の第二百三十八首と第二百三十九首は花薄、尾花の歌である。
作者の「俊頼」は、源経信の子の源俊頼である。白河院の命により本集金葉和歌集を撰んだ。革新的な歌風で知られる。
初句「うづら鳴く」は鶉が鳴くの意で、野の寂しさを思わせる景物である。
二句「真野の入江の」は近江の真野の入り江で、本巻の第二百二十九首の「真野の萩原」と同じく真野を詠んでいる。
三句「浜風に」は浜辺を吹く風にの意である。
四句「尾花波寄る」は尾花の穂が風に揺れて波のように寄せるの意で、尾花を波に見立てている。前歌の第二百三十八首の花薄と同じく、薄の穂を詠んでいる。
結句「秋の夕暮」は体言止めで、景全体を秋の夕暮の情趣に包んで結んでいる。
うづら:鶉。野に住む鳥
をばな:穂の出た薄
いりえ:海や湖が陸地に入り込んだ所
- 作者
-
源俊頼
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
行く人を招くか野辺の花薄 今宵もここに旅寝せよとや
- 次の歌
-
宇治川の川瀬も見えぬ夕霧に 槙の島人舟呼ばふなり