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宇治川の川瀬も見えぬ夕霧に
槙の島人舟呼ばふなり

歌の意味
宇治川の川瀬も見えないほど立ちこめた夕霧の中で、槙の島の人が舟を呼んでいる声が聞こえる。
鑑賞
巻第三 秋歌 240

 宇治川の川瀬も見えないほど深く立ちこめた夕霧の中から、槙の島に住む人が渡し舟を呼ぶ声が聞こえてくる、と詠む歌である。姿の見えない霧の中で声だけが聞こえるという、宇治川の夕暮の情景を描いている。
 本歌は霧を詠む歌で、薄の歌と菊の歌の間に置かれている。

 初句「宇治川の」は山城の宇治川で、霧の名所として知られる。
 二句「川瀬も見えぬ」は川の浅瀬も見えないの意で、霧の深さを示している。
 三句「夕霧に」は夕方に立つ霧の中にの意である。
 四句「槙の島人」は宇治川の中州である槙の島に住む人である。
 結句「舟呼ばふなり」の「呼ばふ」は呼び続ける意で、「なり」は音声による推定の助動詞である。舟を呼ぶ声が聞こえることをいう。

まきのしま:宇治川の中州の地名
よばふ:呼び続ける
出典
金葉和歌集
前の歌
うづら鳴く真野の入江の浜風に 尾花波寄る秋の夕暮
次の歌
盛りなる籬の菊を今朝見れば まだ空冴えぬ雪ぞ積もれる