- 歌の意味
-
三室山では紅葉が散っているらしい。旅人のかぶる菅の小笠に、紅葉が錦を織りかけている。
- 鑑賞
-
巻第四 冬歌 263
旅人のかぶる菅の小笠に紅葉が散りかかって錦を織りなしているのを見て、三室山では紅葉が散っているらしいと推し量る歌である。粗末な菅笠と華やかな錦との取り合わせに趣向があり、旅の景を鮮やかに描いている。
前歌の第二百六十二首の筏師の棹に続き、本歌では旅人の笠に掛かる紅葉を錦に見立て、紅葉を身にまとう人の姿を詠む歌が並んでいる。
本巻の第二百五十七首から第二百六十六首までは、時雨や紅葉など初冬の景物を詠む歌が続く。
作者の「経信」は、源道方の子で大納言に至った源経信である。桂大納言と呼ばれた。晩年は大宰権帥として任地で没した。撰者源俊頼の父である。
初句「三室山」は大和の歌枕で、紅葉の名所である。本巻の第二百六十六首にも「三室の山」が詠まれている。
二句「紅葉散るらし」は紅葉が散っているらしいの意で、根拠に基づく推定の「らし」を用いる。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「旅人の」は旅人のの意で、山の近くを行く人の姿を示している。
四句「菅の小笠に」は菅で編んだ小さな笠にの意で、推定の根拠となる景である。
結句「錦織りかく」は錦を織りかけるの意で、笠に散りかかった紅葉を錦に見立てている。前歌の第二百六十二首の「棹に錦を」と同じく紅葉を錦に見立てている。
みむろやま:大和国の山。紅葉の名所の歌枕
すげのをがさ:菅の葉で編んだ小さな笠
おりかく:織りかける
- 作者
-
源経信
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
大堰川紅葉をわたる筏師は 棹に錦をかけてこそ見れ
- 次の歌
-
なよ竹の音にぞ袖をかづきつる 濡れぬにこそは風と知りぬれ