- 歌の意味
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谷川の淀みに張った氷こそは、誰も見る人のいない鏡であったことだ。
- 鑑賞
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巻第四 冬歌 272
人里離れた谷川の淀みに張った氷を、誰ものぞきこむ人のいない鏡に見立てた歌である。澄んで平らな氷の美しさと、それを見る人のいない山中の寂しさとを重ねている。
前歌の第二百七十一首が葦間の薄い氷を音で知ったのに続き、本歌は谷川の淀みの氷を鏡と見ている。また本巻の第二百八十九首は毎朝見る鏡の影を詠み、見る人のない鏡と対照をなしている。
本巻の第二百七十一首から第二百七十五首までは、氷を詠む歌が続く。
初句「谷川の」は谷間を流れる川で、人里離れた場所を示している。
二句「淀みにむすぶ」は流れの淀んだ所に張るの意で、「むすぶ」は氷が張ることをいう。本巻の第二百九十六首にも「むすぶ氷」が詠まれている。
三句「氷こそ」は氷こそはの意で、係助詞「こそ」が結句の已然形「けれ」と係り結びをなす。
四句「見る人もなき」は見る人もいないの意で、山中の寂しさを示している。
結句「鏡なりけれ」は鏡であったことだの意で、氷を鏡に見立て、詠嘆の「けり」で結んでいる。
よどみ:水が流れずにたまっている所
むすぶ:氷が張る
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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高瀬舟棹の音にぞ知られける 葦間の氷一重しにけり
- 次の歌
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しなが鳥猪名の伏原風冴えて 昆陽の池水氷しにけり