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しなが鳥猪名の伏原風冴えて
昆陽の池水氷しにけり

歌の意味
猪名の伏原に吹く風が冷え込んで、昆陽の池の水は凍ったことだ。
鑑賞
巻第四 冬歌 273

 摂津の猪名野に吹く風が冷たく冴えわたり、近くの昆陽の池の水が凍ってしまった、と詠む歌である。広い野を吹きわたる風の寒さと池の凍結とを結びつけ、摂津の歌枕を重ねて冬の野の景を描いている。
 前歌の第二百七十二首の谷川の氷から、野の池の氷へと場面を移している。
 本巻の第二百七十一首から第二百七十五首までは、氷を詠む歌が続く。
 作者の「仲実」は、藤原能成の子で中宮亮などを務めた藤原仲実である。堀河百首の作者の一人である。

 初句「しなが鳥」は猪名にかかる枕詞である。
 二句「猪名の伏原」は摂津の猪名野の伏原で、低い草木の生えた野原である。
 三句「風冴えて」は風が冷え込んでの意で、凍結の原因を示している。
 四句「昆陽の池水」は摂津の昆陽の池の水で、猪名野の近くにある歌枕である。
 結句「氷しにけり」は凍ったことだの意で、詠嘆の「けり」で結んでいる。本巻の第二百七十一首の結句「一重しにけり」と同じく「しにけり」で結んでいる。

しながどり:「猪名」にかかる枕詞
ゐなのふしはら:摂津国の猪名野にある野原
こやのいけ:摂津国にあった池。歌枕
作者
藤原仲実
出典
金葉和歌集
前の歌
谷川の淀みにむすぶ氷こそ 見る人もなき鏡なりけれ
次の歌
冬寒み空に凍れる月影は 宿にもるこそ解くるなりけれ