朝ごとの鏡の影に面なれて
雪見にとしも急がれぬかな
- 歌の意味
-
毎朝見る鏡に映る姿に見慣れてしまって、雪見に行こうとも急ぐ気にならないことだ。
- 鑑賞
-
巻第四 冬歌 289
毎朝鏡に映る自分の白髪を見慣れてしまったので、わざわざ雪見に出かけようという気にもならない、と詠む歌である。白髪を雪に見立てる伝統的な表現を用い、老いの身の嘆きを雪見という風雅に絡めて、軽い諧謔をこめている。
本巻の第二百七十二首が谷川の氷を見る人もない鏡と詠んだのに対し、本歌は毎朝見る鏡を詠んでいる。
本巻の第二百七十七首から第二百九十三首までは雪を詠む歌が中心で、その間の第二百八十一首から第二百八十三首には鷹狩の歌が置かれている。
初句「朝ごとの」は毎朝のの意である。
二句「鏡の影に」は鏡に映る姿にの意で、鏡に映る白髪を暗示している。本巻の第二百七十二首の「見る人もなき鏡」と対照をなしている。
三句「面なれて」は見慣れての意である。
四句「雪見にとしも」は雪見にと思ってもの意で、「しも」は強めの助詞である。鏡に映る白髪を雪に見立てている。
結句「急がれぬかな」は急ぐ気にならないことだの意で、自発の「る」の打消と終助詞「かな」の詠嘆で結んでいる。
おもなる:見慣れる、慣れて平気になる
ゆきみ:雪景色を眺めて楽しむこと
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
衣手の冴えゆくままにしもと結ふ 葛城山に雪は降りつつ
- 次の歌
-
炭竈にたつ煙さへ小野山は 雪気の雲に見ゆるなりけり