- 歌の意味
-
宮中で久しく美しく咲き匂え、八重桜よ。今吹くのは、のどかな春の風だと知らないのか。
- 鑑賞
-
巻第五 賀歌 308
宮中の八重桜に、いつまでも咲き匂えと呼びかけ、今吹く風は花を散らす風ではなく、のどかな御代の春の風なのだと詠む歌である。「九重」と「八重」の数を重ね、のどかな春の風に治まる御代を重ねて祝っている。
詞花和歌集に入る伊勢大輔の「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな」も、九重と八重を重ねて宮中の八重桜を詠んでいる。
本巻の第三百五首から第三百十首までは、竹、石清水、松、桜などの景物や我が身に寄せて、千代、万代を祝う歌が続く。
初句「九重に」は宮中にの意で、三句の「八重」と数を重ねている。
二句「久しく匂へ」は久しく美しく咲けの意で、命令形で桜に呼びかけている。
三句「八重桜」は花びらの重なった桜で、初句の「九重」と対をなす。ここで句切れとなる三句切れの歌である。次歌の第三百九首、本巻の第三百十四首にも桜が詠まれている。
四句「のどけき春の」はのどかな春のの意で、治まる御代ののどかさを重ねている。
結句「風と知らずや」は風だと知らないのかの意で、花を散らす風ではないことを桜に言い聞かせている。
ここのへ:宮中
にほふ:色美しく照り映える
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
水の面に松の下枝のひちぬれば 千歳は池のこころなりけり
- 次の歌
-
万代とさしてもいはじ桜花 かざさむ春し限りなければ