松風のをことの里に通ふにぞ
治まれる世の声は聞こゆる
- 歌の意味
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松風がをことの里に吹き通うのにつけて、よく治まった世の声が聞こえてくることだ。
- 鑑賞
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巻第五 賀歌 317
松風が「をことの里」に吹き通う音に、よく治まった世の声を聞き取る歌である。里の名の「こと」に琴を掛け、松風を琴の音に通わせる古来の趣向を用いている。拾遺和歌集の斎宮女御の「琴の音に峰の松風通ふらしいづれのをより調べそめけむ」に代表される趣向である。
世がよく治まれば楽の音も安らかになるとする考え方を踏まえ、松風の音を治まる御代の声としている。
本巻の第三百十五首から第三百十九首までは、鼓の山、朝日の里、をことの里、にまの里など、地名を詠み込んで治まる御代を祝う歌が続く。地名を詠み込んで御代を祝う形は、大嘗会の悠紀方、主基方の歌に多く見られるものである。
初句「松風の」は松に吹く風のの意で、琴の音にたとえられる風を示している。
二句「をことの里に」は里の名で、「こと」に琴を掛け、初句の「松風」と縁を結んでいる。
三句「通ふにぞ」は吹き通うにつけての意で、係助詞「ぞ」が結句の連体形「聞こゆる」と係り結びをなす。
四句「治まれる世の」はよく治まった世のの意で、存続の「り」を用いる。
結句「声は聞こゆる」は声が聞こえるの意で、松風の音を治まる世の声として聞いている。
をことのさと:里の名に、楽器の「琴」を掛ける
かよふ:行き来する。風や音が通う
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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曇りなき豊の明かりにあふみなる 朝日の里は光さしそふ
- 次の歌
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調物運ぶよほろを数ふれば にまの里人数添ひにけり