苗代の水はいなゐにまかせたり
民安げなる君が御代かな
- 歌の意味
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苗代の水は、いなゐから引き入れて任せてある。民が安らかに暮らしている君の御代であることだ。
- 鑑賞
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巻第五 賀歌 319
苗代に引く水はいなゐに任せて十分に行き渡り、民は安らかに暮らしている、と君の御代を祝う歌である。田の水に困らない農村の安らぎを通して、治まる御代をたたえている。
「まかす」に水を引き入れる意と、ゆだねる意とを掛けるのは、本巻の第三百六首と同じである。
本巻の第三百十五首から第三百十九首までは、鼓の山、朝日の里、をことの里、にまの里など、地名を詠み込んで治まる御代を祝う歌が続く。地名を詠み込んで御代を祝う形は、大嘗会の悠紀方、主基方の歌に多く見られるものである。
初句「苗代の」は稲の苗を育てる田のの意である。
二句「水はいなゐに」は水はいなゐにの意で、「いなゐ」は地名とみられ、苗代の水を引き入れる所として示している。
三句「まかせたり」の「まかせ」は、水を引き入れる意の「まかす」と、ゆだねる意の「任す」との掛詞で、平仮名のままとした。本巻の第三百六首の「まかせたるべし」と同じ掛詞である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「民安げなる」は民が安らかなさまであるの意である。
結句「君が御代かな」は君の御代であることだの意で、終助詞「かな」で詠嘆している。次歌の第三百二十首も同じ結句で結んでいる。
なはしろ:稲の苗を育てる田
いなゐ:地名とみられる
まかす:田などに水を引き入れる意と、物事をゆだねる意の「任す」を掛ける
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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調物運ぶよほろを数ふれば にまの里人数添ひにけり
- 次の歌
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いつとなく風吹く空に立つ塵の 数も知られぬ君が御代かな