- 歌の意味
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あなたはつれない人だ。花の都の花を見ないで、田舎の苗代水へと急いで下っていく、その心よ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 334
花の盛りの都の花を見ることもなく、田舎の苗代水のもとへと急いで下っていく人の心を、つれないと恨んでみせる歌である。華やかな都の花と田舎の苗代水とを対比し、別れの惜しさを恨み言の形で表している。
伝本の中には、「兼房朝臣丹後守になりて下りけるにつかはしける」の詞書を持つものがある。藤原兼房が丹後守に任じられて任国へ下る折に贈った歌ということになり、苗代水は春の任国の田園をさしている。次歌の第三百三十五首は、この歌に答えた返しである。
本歌は巻第六別歌の巻頭歌である。巻第五賀歌の巻末の第三百三十三首が万代までの御代を祝って巻を結んだのを受けて、本巻は人との別れを詠む歌で始まる。巻末の第三百四十九首の「急ぐと思ひし」とは「急ぐ」の語が呼応している。
初句「君憂しや」はあなたはつれない人だの意で、「憂し」は相手の仕打ちを恨めしく思う気持ちを表す。ここで句切れとなる初句切れの歌である。
二句「花の都の」は花の咲き誇る都のの意で、華やかな都をいう。本巻の第三百四十二首の「都の方へ」、第三百四十七首の「都を偲ぶ」と同じく都を詠んでいる。
三句「花を見で」は花を見ないでの意で、打消の接続助詞「で」を用いる。仮名の「みて」に濁点を補って読んでいる。二句と三句で「花」の語を重ねている。
四句「苗代水に」は苗代に引く水にの意で、都の花に対して田舎の田園を示している。次歌の第三百三十五首の二句も「苗代水に」である。
結句「急ぐ心よ」は急いで下っていく心よの意で、間投助詞「よ」で詠嘆している。巻末の第三百四十九首の二句「急ぐと思ひし」と呼応している。
なはしろみづ:苗代に引き入れる水
- 出典
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金葉和歌集
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曇りなく豊栄昇る朝日には 君ぞ仕へむ万代までに
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よそに聞く苗代水にあはれ我が おりたつ名をも流しつるかな