よそに聞く苗代水にあはれ我が
おりたつ名をも流しつるかな
- 歌の意味
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これまでよそごととして聞いていた苗代水に、ああ、私が降り立つことになり、田舎へ下る者という評判までも流してしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 335
前歌の第三百三十四首に答えた返しの歌である。これまでよそごととして聞いていた苗代水に自ら降り立つことになり、田舎へ下る者という評判まで世に流してしまった、と嘆いてみせている。前歌の「苗代水」をそのまま受け、田に降り立つことと任国へ下ることとを重ねて、恨み言に軽く応じている。
伝本の中には、作者を藤原兼房とし、前歌への「返し」とするものがある。丹後守となって任国へ下る兼房自身の答えということになる。
本巻の第三百三十四首と第三百三十五首は、苗代水を詠み交わした贈答の二首である。
初句「よそに聞く」はよそごととして聞いていたの意で、これまで自分とは関わりのないものと思っていたことを示している。
二句「苗代水に」は前歌の第三百三十四首の四句と同じ句で、贈られた歌の語をそのまま受けている。
三句「あはれ我が」はああ、私がの意で、感動詞「あはれ」で嘆きを表している。
四句「おりたつ名をも」の「おりたつ」は、苗代の田に降り立つ意と、都から任国へ下る意とを掛けており、平仮名のままとした。「名」は評判の意である。
結句「流しつるかな」は流してしまったことだの意で、「流す」は評判を世に広める意であり、二句の「水」と縁語をなす。完了の「つ」に終助詞「かな」を添えて詠嘆している。
おりたつ:苗代の田に降り立つ意と、都から任国へ下る意を掛ける
な:評判、うわさ
ながす:評判を世に広める。「水」の縁語
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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君憂しや花の都の花を見で 苗代水に急ぐ心よ
- 次の歌
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帰るべき旅の別れと慰むる 心に違ふ涙なりけり