片敷きの袖にひとりは明かせども
落つる涙ぞ夜を重ねける
- 歌の意味
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自分の袖だけを敷いて、ひとり寝で夜を明かしているけれども、こぼれ落ちる涙は夜ごとに重なっていくことだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 338
旅の途上で、自分の袖だけを敷いてひとり寝の夜を明かしているが、こぼれ落ちる涙だけは夜を重ねて積もっていく、と詠む歌である。「ひとり」と「重ね」を対比し、孤独な旅寝のつらさと、都の人を恋う思いの深まりを表している。
伝本の中には、作者を藤原長房とし、「経輔卿大宰帥にて下りはべる時、道より上東門院にはべりける人のもとへつかはしける」の詞書を持つものがある。大宰帥となった藤原経輔の下向に従う旅の途中から、上東門院に仕える女房に贈った歌ということになる。
本巻の第三百三十八首と第三百三十九首は、旅先から届いた歌と、それを見た人の歌とが組になっている。
初句「片敷きの」は自分の衣の袖だけを敷いて寝るの意で、ひとり寝を表す歌語である。
二句「袖にひとりは」は袖の上にひとりではの意で、次歌の第三百三十九首の結句「袖は濡れける」と「袖」の語を共有している。
三句「明かせども」は夜を明かすけれどもの意で、逆接の「ども」を用いる。
四句「落つる涙ぞ」はこぼれ落ちる涙はの意で、係助詞「ぞ」が結句の連体形「ける」と係り結びをなす。本巻の第三百三十六首の結句「涙なりけり」にも涙が詠まれている。
結句「夜を重ねける」は夜を重ねていくことだの意で、二句の「ひとり」に対して涙は重なると詠み、旅の日数が重なることも表している。
かたしく:自分の衣の袖だけを敷いて寝る。ひとり寝をいう
あかす:夜を明かす
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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後れ居て我が恋ひ居れば白雲の たなびく山を今日や越ゆらむ
- 次の歌
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別れ路をげにいかばかり嘆くらむ 聞く人さへぞ袖は濡れける