今日はさは立ち別るとも便りあらば
ありやなしやの情け忘るな
- 歌の意味
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今日はそれでは別れて旅立つとしても、つてがあるならば、私が無事でいるかどうかを尋ねる情けを忘れないでほしい。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 344
今日はこうして別れるとしても、つてがあれば、私が無事でいるかどうかを尋ねてくれる情けだけは忘れないでほしい、と旅立つ人に願う歌である。別れを受け入れながら、その後の音信を求める心を素直に詠んでいる。
「ありやなしや」は、伊勢物語や古今和歌集に見える在原業平の「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」を踏まえた言葉で、遠く離れた人の安否を気づかう思いを含んでいる。
伝本の中には、「百首歌中に別れの心を」の詞書を持つものがある。百首歌の中で別れの心を詠んだ歌ということになる。
作者の「国信」は、右大臣源顕房の子で、権中納言に至った源国信である。堀河天皇の歌壇で活躍し、堀河百首の作者の一人である。
初句「今日はさは」は今日はそれではの意で、別れを受け入れる気持ちを示している。
二句「立ち別るとも」は別れて旅立つとしてもの意で、逆接仮定の「とも」を用いる。次歌の第三百四十五首の「たち別れぬる」と同じく「立ち別る」を詠んでいる。
三句「便りあらば」はつてがあるならばの意で、未然形に「ば」を付けた仮定である。
四句「ありやなしやの」は無事でいるかどうかの意で、在原業平の都鳥の歌の「ありやなしやと」を踏まえている。
結句「情け忘るな」は情けを忘れるなの意で、禁止の終助詞「な」を用いる。本巻の第三百四十八首の結句「我を忘るな」と同じく、禁止の「な」で結んで相手に願っている。
たちわかる:別れて旅立つ
たより:つて、手段、機会
なさけ:思いやり、人情
- 作者
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源国信
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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待ちつけむ我が身なりせば幾千度 帰り来む日を君に問はまし
- 次の歌
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秋霧のたち別れぬる君により 晴れぬ思ひに惑ひぬるかな