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秋霧のたち別れぬる君により
晴れぬ思ひに惑ひぬるかな

歌の意味
秋霧が立つように、立ち別れていったあなたのために、霧のように晴れない思いに心が迷ってしまったことだ。
鑑賞
巻第六 別歌 345

 秋霧が立つように別れていったあなたのために、霧が晴れないように晴れることのない思いに迷っている、と詠む歌である。秋霧を導きとして、「たち」「晴れぬ」「惑ふ」と霧にかかわる語を連ね、別れの後の心の晴れなさを表している。
 前歌の第三百四十四首と本歌は、ともに「立ち別る」を詠む二首である。前歌が別れの後の音信を願ったのに対し、本歌は別れてしまった後の思いを詠んでいる。
 作者の「基俊」は、右大臣藤原俊家の子の藤原基俊である。官位には恵まれなかったが、源俊頼と並ぶ歌壇の指導者として知られた。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「秋霧の」は秋の霧がの意で、霧が立つことから二句の「たち」を導いている。
 二句「たち別れぬる」の「たち」は、霧が立つ意と、立ち別れる意とを掛けており、平仮名のままとした。完了の「ぬ」の連体形を用いる。前歌の第三百四十四首の「立ち別るとも」と同じく「立ち別る」を詠んでいる。
 三句「君により」はあなたのためにの意で、思いの原因を示している。
 四句「晴れぬ思ひに」は晴れない思いにの意で、「晴る」は初句の「霧」の縁語である。
 結句「惑ひぬるかな」は迷ってしまったことだの意で、霧の中で道に迷うさまを心の迷いに重ねている。完了の「ぬ」に終助詞「かな」を添えて詠嘆している。

たつ:霧が立つ意と、立ち別れる意を掛ける
まどふ:心が乱れて迷う
作者
藤原基俊
出典
金葉和歌集
前の歌
今日はさは立ち別るとも便りあらば ありやなしやの情け忘るな
次の歌
人はいさ我が身は末になりぬれば またあふさかをいかが待つべき