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我ひとり急ぐと思ひし東路に
垣根の梅はさきだちにけり

歌の意味
自分ひとりが急いでいると思っていた東国への道で、垣根の梅は私より先に咲いていたことだ。
鑑賞
巻第六 別歌 349

 自分ひとりが急いで旅立つと思っていた東国への道で、垣根の梅は自分より先に咲いて、先立っていた、と詠む歌である。「さきだち」に咲き立つと先立つを掛け、旅立ちの道で目にした梅の早さへの驚きを込めている。
 伝本の中には、作者を橘則光とし、「陸奥へまかりける時、逢坂の関より都へつかはしける」の詞書を持つものがある。陸奥へ下る途中、逢坂の関から都の人へ贈った歌ということになり、旅立つ側の思いを詠んでいる。
 本歌は巻第六別歌の巻末歌である。巻頭の第三百三十四首が都に残る人の側から苗代水に「急ぐ心」を恨んだのに対し、本歌は旅立つ側から「急ぐ」を詠んで巻を結び、巻頭と巻末が呼応している。

 初句「我ひとり」は自分ひとりがの意で、旅立ちを急ぐのは自分だけだと思っていたことを示している。
 二句「急ぐと思ひし」は急いでいると思っていたの意で、過去の「き」の連体形を用いる。巻頭の第三百三十四首の結句「急ぐ心よ」と呼応している。
 三句「東路に」は東国へ向かう道にの意である。
 四句「垣根の梅は」は垣根に咲く梅はの意で、旅立ちの季節が春であることを示している。巻頭の第三百三十四首の「花の都の花」とも春の花の趣が通っている。
 結句「さきだちにけり」の「さきだち」は、花が咲く意の「咲き立つ」と、先に行く意の「先立つ」とを掛けており、平仮名のままとした。完了の「ぬ」に詠嘆の「けり」を添えている。

あづまぢ:都から東国へ向かう道
さきだつ:「咲き立つ」意と、先に行く意の「先立つ」を掛ける
出典
金葉和歌集
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さし昇る朝日に君を思ひ出でむ 傾く月に我を忘るな
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知らざりつ袖のみ濡れてあやめ草 かかるこひぢに生ひむものとは