さりともと思ふ限りは忍ばれて
鳥とともにぞ音は泣かれける
- 歌の意味
-
それでもいつかはと思っている間はこらえることができたが、明け方の鳥とともに、声を上げて泣いてしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第七 恋歌上 352
それでもあの人は来るだろうと期待している間は涙をこらえられたが、夜明けを告げる鳥が鳴くと、その声とともに自分も声を上げて泣いてしまった、と詠む歌である。待つ夜が明けて望みが絶える瞬間を、鶏の声に重ねて表している。
伝本の中には、「暁の恋をよめる」の詞書を持つものがある。暁の恋を題として詠んだ歌ということになる。
作者の「顕仲」は、右大臣源顕房の子で、神祇伯に至った源顕仲である。堀河百首の作者の一人である。
初句「さりともと」はそうはいってもいつかはの意で、あの人は来るだろうという期待を示している。
二句「思ふ限りは」は思っている間はの意である。
三句「忍ばれて」はこらえることができての意で、可能の「る」を用いる。
四句「鳥とともにぞ」は暁の鶏の声とともにの意で、係助詞「ぞ」が結句の連体形「ける」と係り結びをなす。鶏の鳴く声と自分の泣く声とを重ねている。本巻の第三百六十一首も、浜千鳥の鳴く声に自分の泣く声を重ねている。
結句「音は泣かれける」は声を上げて泣いてしまったことだの意で、自発の「る」に詠嘆の「けり」を添えている。
ね:泣き声
- 作者
-
源顕仲
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
篠薄上葉にすがくささがにの いかさまにせば人なびきなむ
- 次の歌
-
これにしく思ひはなきを草枕 旅に返すはいなむしろとや