これにしく思ひはなきを草枕
旅に返すはいなむしろとや
- 歌の意味
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これに及ぶほどの思いはほかにないのに、旅人のように私を帰してしまうのは、稲筵ではないが、いやだということなのか。
- 鑑賞
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巻第七 恋歌上 353
これほどの深い思いはほかにないのに、訪ねて行った自分を旅人のように帰してしまうのは、稲筵ではないが「否」ということなのか、と相手のつれなさを問う歌である。「しく」「草枕」「むしろ」と敷物にかかわる語を連ね、恨み言に機知を込めている。
伝本の中には、「つれなかりける女のもとにつかはしける」の詞書を持つものがある。
作者の「公実」は、藤原実季の子で、春宮大夫を務め権大納言に至った藤原公実である。堀河百首の作者の一人である。
初句「これにしく」はこれに及ぶの意で、「しく」は及ぶ意に、敷く意を響かせている。三句の「草枕」、結句の「むしろ」と縁語をなしている。
二句「思ひはなきを」は思いはないのにの意で、逆接の「を」を用いる。
三句「草枕」は「旅」にかかる枕詞である。本巻の第三百八十五首の「草の枕」、第四百五首の「草枕」も旅の寝を詠んでいる。
四句「旅に返すは」は旅人のように帰してしまうのはの意で、訪ねて来た自分を迎え入れずに帰すことをいう。
結句「いなむしろとや」の「いなむしろ」は、拒む意の「否」と、稲わらで編んだ敷物の「稲筵」とを掛けており、平仮名のままとした。本巻の第三百九十首の「さむしろ」にも筵が詠まれている。
しく:及ぶ。敷く意を響かせる
いなむしろ:拒む意の「否」と、稲わらで編んだ敷物の「稲筵」を掛ける
- 作者
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藤原公実
- 出典
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金葉和歌集
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さりともと思ふ限りは忍ばれて 鳥とともにぞ音は泣かれける
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逢ふと見て現のかひはなけれども はかなき夢ぞ命なりける