ふみ初めて思ひ返りし紅の
筆のすさびをいかで見せけむ
- 歌の意味
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手紙を書き始めては思い直したのに、紅に染まるような思いを書きつけた筆のすさびを、どうして見せてしまったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第七 恋歌上 373
手紙を書き始めては思い返してやめたはずなのに、紅に染まるような深い思いを書きつけた筆のすさびを、どうして相手に見せてしまったのだろう、と悔やむ歌である。思いを秘めようとしながら抑えきれなかった心の揺れを表している。語句の解釈には諸説がある。
伝本の中には、作者を「内大臣家小大進」と記すものがある。
前歌の第三百七十二首と本歌は、ともに「すさび」と手紙を詠む二首である。
作者の「花園左大臣家小大進」は、花園左大臣と呼ばれた源有仁の家に仕えた女房である。石清水八幡宮の別当光清の娘とされる。
初句「ふみ初めて」の「ふみ」は、手紙の「文」と、歩みを「踏み」出す意とを掛けており、平仮名のままとした。「踏み」は二句の「返り」と縁のある語である。
二句「思ひ返りし」は思い直したの意で、過去の「き」の連体形を用いる。
三句「紅の」は紅色のの意で、深い思いの色を表している。
四句「筆のすさびを」は筆にまかせて書いたものをの意である。前歌の第三百七十二首の結句「すさびなりとも」と同じく「すさび」を詠んでいる。
結句「いかで見せけむ」はどうして見せてしまったのだろうの意で、過去推量の「けむ」を用いる。
ふみ:手紙の「文」と、歩みを「踏み」出す意を掛ける
すさび:気まぐれの慰み
- 作者
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花園左大臣家小大進
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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あさましやなどかき絶ゆる藻塩草 さこそは海人のすさびなりとも
- 次の歌
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知るらめや淀の継橋よとともに つれなき人を恋ひわたるとは