古典和歌stream

知るらめや淀の継橋よとともに
つれなき人を恋ひわたるとは

歌の意味
あの人は知っているだろうか。淀の継橋を渡るように、夜ごとに、つれないあの人を恋い続けているとは。
鑑賞
巻第七 恋歌上 374

 淀の継橋を渡り続けるように、来る夜も来る夜もつれないあの人を恋い続けていることを、あの人は知っているだろうか、と詠む歌である。継橋と「わたる」の縁で、途切れることなく続く片思いを表している。
 伝本の中には、作者を藤原長実の母とし、「実行卿の家の歌合に恋の心をよめる」の詞書を持つものがある。藤原実行の家の歌合で、恋の題で詠んだ歌ということになる。

 初句「知るらめや」は知っているだろうかの意で、反語の気持ちを含む。ここで句切れとなる初句切れの歌で、倒置により結句の「とは」へと続く。本巻の第三百六十八首、第四百一首の結句「人知るらめや」と同じ形である。
 二句「淀の継橋」は山城の淀にある継橋で、板を継いで架けた橋をいう。「淀」の音から三句の「よ」を導いている。
 三句「よとともに」は夜とともに、すなわち夜ごとにの意で、二句の「淀」と音を重ねている。本巻の第三百八十七首の初句も「夜とともに」である。
 四句「つれなき人を」は冷淡なあの人をの意である。
 結句「恋ひわたるとは」は恋い続けているとはの意で、「わたる」は二句の「継橋」と縁語をなす。本巻の第四百十九首の結句「恋ひわたるかな」も同じ語を用いている。

つぎはし:板を継いで架けた橋
こひわたる:恋い続ける
出典
金葉和歌集
前の歌
ふみ初めて思ひ返りし紅の 筆のすさびをいかで見せけむ
次の歌
恋ひわびて押さふる袖や流れ出づる 涙の川の井堰なるらむ