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あやめにもあらぬ真菰を引きかけし
かりのよどのの忘られぬかな

歌の意味
菖蒲でもない真菰を引いて掛けた、かりそめの夜の寝所のことが忘れられないことだ。
鑑賞
巻第七 恋歌上 388

 菖蒲でもない真菰を引き掛けて設けた、かりそめの寝所で過ごした夜が忘れられない、と詠む歌である。「かり」「よどの」に、真菰を刈る淀の地とかりそめの夜殿とを重ね、一夜の思い出を懐かしんでいる。
 伝本の中には、「忘れがたさに言ひつかはしける」と結ぶ詞書を持つものがある。忘れがたく思って言い贈った歌ということになる。
 作者の「相模」は、相模守大江公資の妻であったことから相模と呼ばれた女房歌人である。脩子内親王に仕え、小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「あやめにも」は菖蒲でもの意である。巻頭の第三百五十首、次歌の第三百八十九首の「あやめ草」と同じく菖蒲を詠んでいる。
 二句「あらぬ真菰を」はそうではない真菰をの意で、真菰は水辺に生える草である。
 三句「引きかけし」は引いて掛けたの意で、過去の「き」の連体形を用いる。
 四句「かりのよどのの」の「かり」は、真菰を「刈り」の意と「仮」の意とを掛け、「よどの」は、真菰の名所の「淀」と、寝所の「夜殿」とを掛けており、平仮名のままとした。
 結句「忘られぬかな」は忘れられないことだの意で、可能の「る」に打消の「ず」、終助詞「かな」を添えている。

まこも:水辺に生える草
かり:真菰を「刈り」の意と、「仮」を掛ける
よどの:真菰の名所の「淀」と、寝所の「夜殿」を掛ける
作者
相模
出典
金葉和歌集
前の歌
夜とともに玉散る床の菅枕 見せばや人に夜半のけしきを
次の歌
なぞもかくこひぢに立ちてあやめ草 あまり長引く五月なるらむ