古典和歌stream

言はぬ間は下這ふ葦の根をしげみ
隙なき恋を人知るらめや

歌の意味
口に出して言わない間は、水の下を這う葦の根が茂っているように、隙間なく思い続けるこの恋を、あの人は知っているだろうか。
鑑賞
巻第七 恋歌上 401

 思いを口に出さずにいる間は、水の下に這う葦の根がびっしりと茂っているように、絶え間なく思い続ける恋を、あの人は知るはずもない、と詠む歌である。見えない水の下に茂る葦の根に、人知れず募る恋心をたとえている。
 本巻の第三百六十八首と結句が同じ「人知るらめや」で、ともに表に見えない下の景によって忍ぶ恋を詠んでいる。
 作者の「忠通」は、関白藤原忠実の子で、摂政、関白、太政大臣を歴任した藤原忠通である。法性寺入道と呼ばれ、小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「言はぬ間は」は口に出して言わない間はの意である。
 二句「下這ふ葦の」は水の下を這う葦のの意で、本巻の第三百六十八首の「したに」と同じく、表に見えない下のさまを詠んでいる。
 三句「根をしげみ」は根が茂っているのでの意で、「を」と形容詞の語幹に「み」を付けて原因を表す形である。初句から三句までが、四句の「隙なき」を導く序となっている。
 四句「隙なき恋を」は絶え間のない恋をの意である。
 結句「人知るらめや」はあの人は知っているだろうかの意で、反語であり、知るまいの意を表す。本巻の第三百六十八首と同じ結句である。

あし:水辺に生える草
ひま:すきま、絶え間
作者
藤原忠通
出典
金葉和歌集
前の歌
後の世と契りし人もなきものを 死なばやとのみ言ふぞはかなき
次の歌
待ちし夜の更けしを何に嘆きけむ 思ひ絶えても過ぐしける身を