忍ぶれどかひもなぎさの海人小舟
波はかけても今はうらみじ
- 歌の意味
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こらえ忍んでも甲斐もないので、渚の海人の小舟が波をかぶるように袖を涙で濡らしても、今はもう恨みはすまい。
- 鑑賞
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巻第七 恋歌上 409
恋を忍んでもその甲斐もないが、渚の海人の小舟が波をかぶるように袖が涙に濡れようとも、今はもう恨むことはすまい、と詠む歌である。「かひ」に甲斐と櫂、「なぎさ」に無きと渚、「うらみ」に浦見と恨みを掛け、海辺の景に忍ぶ恋のあきらめを重ねている。
伝本の中には、「忍恋をよめる」の詞書を持つものがある。
初句「忍ぶれど」はこらえ忍んでもの意で、逆接の「ど」を用いる。
二句「かひもなぎさの」の「かひ」は、「甲斐」と、舟をこぐ「櫂」とを掛け、「なぎさ」は、甲斐も「無き」の意と、波打ち際の「渚」とを掛けており、いずれも平仮名のままとした。本巻の第三百六十一首の「いつとなぎさの」も同じく「なぎさ」の掛詞である。
三句「海人小舟」は海人の乗る小さな舟で、二句の「櫂」と縁語をなしている。
四句「波はかけても」は波がかかってもの意で、袖に涙がかかることを重ねている。
結句「今はうらみじ」の「うらみ」は、浦を見る意の「浦見」と「恨み」とを掛けており、平仮名のままとした。打消意志の「じ」を用いる。本巻の第三百九十五首の「うらみてもなほ」も同じ掛詞である。
かひ:「甲斐」と、舟をこぐ「櫂」を掛ける
なぎさ:甲斐も「無き」の意と、波打ち際の「渚」を掛ける
あまをぶね:海人の乗る小さな舟
うらみ:浦を見る意の「浦見」と、「恨み」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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心ざしあさぢが末に置く露の たまさかに訪ふ人は頼まじ
- 次の歌
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なぞもかく身にかふばかり思ふらむ 逢ひ見むことも人のためかは