古典和歌stream

あやにくに焦がるる胸もあるものを
いかにかわかぬ袂なるらむ

歌の意味
意地の悪いことに、このように恋に焦がれて燃える胸もあるのに、どうして乾かない袂なのだろうか。
鑑賞
巻第七 恋歌上 413

 恋に焦がれて火のように燃える胸があるのだから、その熱で乾いてもよさそうなのに、どうして涙に濡れた袂は乾かないのだろう、と詠む歌である。燃える胸と濡れる袂という火と水の対比によって、恋の苦しさを機知的に表している。
 本巻の第三百九十九首も「恋に焦がるる」と、燃える恋を詠んでいる。

 初句「あやにくに」は意地の悪いことにの意である。
 二句「焦がるる胸も」は恋い焦がれて燃える胸もの意で、本巻の第三百九十九首の二句「恋に焦がるる」と同じく焦がれる恋を詠んでいる。
 三句「あるものを」はあるのにの意で、逆接の「ものを」を用いる。
 四句「いかにかわかぬ」はどうして乾かないのかの意で、二句の「焦がるる」の火と「乾く」とが対応している。
 結句「袂なるらむ」は袂なのだろうかの意で、現在推量の「らむ」を用いる。

こがる:恋い焦がれる。火に焼けて焦げる意を響かせる
たもと:袖の下の垂れた部分
出典
金葉和歌集
前の歌
我が恋は烏羽に書く言の葉の 写さぬほどは知る人もなし
次の歌
恋ひわびて思ひいるさの山の端に 出づる月日の積もりぬるかな