古典和歌stream

葦根はふ水の上とぞ思ひしを
うきは我が身にありけるものを

歌の意味
葦の根が這う水の上こそ浮いているものだと思っていたのに、うきもの、つらいものは、ほかならぬ我が身にあったのだ。
鑑賞
巻第七 恋歌上 417

 浮くものといえば葦の根の這う水の上のことだと思っていたのに、実はつらく憂いものは自分の身の上にあったのだ、と詠む歌である。「うき」に浮きと憂きを掛け、相手を恨む心を我が身の憂さとして表している。
 伝本の中には、「女を恨みてつかはしける」の詞書を持つものがある。
 作者の「公実」は、藤原実季の子で、春宮大夫を務め権大納言に至った藤原公実である。堀河百首の作者の一人である。

 初句「葦根はふ」は葦の根が這うの意で、水辺の景を示している。本巻の第四百一首の「下這ふ葦の」も葦の根を詠んでいる。
 二句「水の上とぞ」は水の上であるとの意で、係助詞「ぞ」で強めている。
 三句「思ひしを」は思っていたのにの意で、過去の「き」の連体形に逆接の「を」を付けている。
 四句「うきは我が身に」の「うき」は、水に「浮き」の意と、つらい意の「憂き」とを掛けており、平仮名のままとした。本巻の第三百九十首の「涙のうきに」も同じ掛詞である。
 結句「ありけるものを」はあったのだなあの意で、詠嘆の「けり」に「ものを」を添えている。

あしね:葦の根
うき:水に「浮き」の意と、つらい意の「憂き」を掛ける
作者
藤原公実
出典
金葉和歌集
前の歌
思ひ草葉末に結ぶ白露の たまたま来ては手にもかからず
次の歌
立ちながら来たりと逢はじ藤衣 脱ぎ捨てられむ身ぞと思へば