かすめては思ふ心を知るやとて
春の空にもまかせつるかな
- 歌の意味
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それとなくほのめかしてみれば、思う心を知ってくれるかと思って、霞む春の空にまで、わが思いをまかせてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 421
それとなくほのめかせば、思っている心をあの人もわかってくれるだろうかと、霞のかかる春の空にまで思いをゆだねてしまった、と詠む歌である。はっきりとは打ち明けられない恋心を、春霞にたくしてほのめかすという趣向で、忍ぶ恋のもどかしさを表している。
本歌は巻第八恋歌下の巻頭歌である。巻第七恋歌上の巻頭の第三百五十首が恋の道に踏み入った驚きを詠んだのに続き、下巻はまだ打ち明けられない思いを春の霞にたくす歌で始まっている。巻末の第五百十五首は、恋をせよと生まれたのではなかったと嘆いて恋の部を結んでおり、ほのかな思いで始まった巻が、恋そのものへの嘆きで閉じられる構成となっている。
作者の「良暹」は、平安時代中期の天台宗の僧で、祇園別当を務めたと伝わる歌人である。小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「かすめては」の「かすめ」は、それとなくほのめかす意の「かすむ」と、春霞がかかる意の「霞む」とを掛けており、平仮名のままとした。接続助詞「て」に係助詞「は」が付き、ほのめかしてみてはの意となる。
二句「思ふ心を」は、恋い慕っている心をの意である。
三句「知るやとて」は、知ってくれるかと思っての意で、係助詞「や」による問いかけを「とて」で受けている。
四句「春の空にも」は、霞の立ちこめる春の空にもの意で、初句の「霞む」と縁語をなしている。係助詞「も」は、春の空にまでもの意を添えている。
結句「まかせつるかな」は、ゆだねてしまったことだの意で、完了の「つ」の連体形に詠嘆の終助詞「かな」が付いている。
かすむ:それとなくほのめかす意の「かすむ」と、霞がかかる意の「霞む」を掛ける
まかす:ゆだねる、任せる
- 作者
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良暹
- 出典
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金葉和歌集
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頼めおく言の葉だにもなきものを 何にかかれる露の命ぞ
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恋ひわたる人に見せばや松の葉の 下紅葉する天の橋立