先の世の契りを知らではかなくも
人をつらしと思ひけるかな
- 歌の意味
-
前世からの因縁を知らないで、浅はかにも、あの人を薄情だと思っていたことよ。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 438
逢えないのは前世からの因縁によるものだとも知らずに、浅はかにもあの人を薄情だと恨んでいた、と詠む歌である。恋のつらさを前世の宿縁としてとらえ直し、相手を恨んでいた自分を省みている。
巻第七の第三百九十八首は、逢った後につらければ世々を経てこれよりまさる恋に惑うだろうと来世を詠んでおり、本歌は前世を詠んで、恋を幾世にもわたる宿縁としてとらえる点で通じている。
初句「先の世の」は、前世のの意である。
二句「契りを知らで」は、因縁を知らないでの意で、「契り」は前世からの約束、宿縁をいう。打消の接続助詞「で」を用いる。
三句「はかなくも」は、浅はかにもの意である。
四句「人をつらしと」は、あの人を薄情だとの意である。
結句「思ひけるかな」は、思っていたことだの意で、詠嘆の「けり」の連体形に終助詞「かな」が付き、今になって気づいた思いを表している。
さきのよ:前世
ちぎり:前世からの約束、宿縁
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
つらきをも思ひも知らぬ身のほどに 恋しさいかで忘れざるらむ
- 次の歌
-
忘れ草しげれる宿を来て見れば 思ひのきより生ふるなりけり