思ひきや逢ひ見し夜半の嬉しさに
後のつらさのまさるべしとは
- 歌の意味
-
思っただろうか、いや思いもしなかった。逢った夜のうれしさよりも、その後のつらさがまさることになろうとは。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 441
逢った夜のうれしさよりも、その後のつらさのほうがまさることになるとは思いもしなかった、と詠む歌である。逢瀬を遂げた後に、かえって苦しみが深まる恋の皮肉を表している。
本巻の第四百五十九首は、まれに逢う夜は夢のようで恋しさばかりが現実だと詠んでおり、逢った喜びのはかなさと、その後の苦しさを詠む点で通じている。
初句「思ひきや」は、思っただろうか、いや思いもしなかったの意で、過去の「き」に反語の係助詞「や」が付いている。初句切れの歌で、倒置により結句の「とは」へと続く。
二句「逢ひ見し夜半の」は、逢った夜のの意で、「逢ひ見る」は男女が契りを結ぶことをいう。
三句「嬉しさに」は、うれしさに比べての意である。
四句「後のつらさの」は、その後のつらさがの意である。
結句「まさるべしとは」は、まさることになろうとはの意で、当然の「べし」を用い、初句の「思ひきや」に返る倒置の形となっている。
あひみる:男女が逢う、契りを結ぶ
よは:夜中
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
今よりは思ひも出でじ恨めしと 言ふも頼みのかかる限りぞ
- 次の歌
-
逢はずとも無からむ世にも思ひ出でよ 我ゆゑ命絶えし人ぞと