いかにせむなげきの森は繁けれど
木の間の月の隠れなき世を
- 歌の意味
-
どうしたらよいのだろう。嘆きの森は木々が茂っているけれども、その木の間から漏れる月が隠れようもないように、恋も隠しおおせない世の中であるのに。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 448
嘆きの森は木々が茂っていても、木の間の月が隠れようもないように、深い嘆きに包まれていても恋は人に知られずにはすまない、どうしたらよいのか、と詠む歌である。大隅の歌枕の「嘆きの森」と木の間の月を詠み、隠そうとしても隠しきれない恋を表している。
前歌の第四百四十七首の「もる山のなげき」を受けて、本歌は「なげきの森」を詠み、嘆きを山から森へと広げている。
初句「いかにせむ」は、どうしたらよいだろうの意で、初句切れの歌である。倒置により結句の「世を」へと続く。
二句「なげきの森は」の「なげき」は、「嘆き」と、大隅の歌枕の「嘆きの森」とを掛けており、平仮名のままとした。前歌の第四百四十七首の四句「なげき」と同じ語である。
三句「繁けれど」は、木々が茂っているけれどもの意で、嘆きの多いことを重ねている。
四句「木の間の月の」は、木々の間から見える月のの意である。
結句「隠れなき世を」は、隠れようもない世の中であるのにの意で、恋が人に知られてしまうことをいう。「を」が詠嘆を込めている。
なげきのもり:大隅の歌枕。「嘆き」を掛ける
このま:木々の間
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
押さふれど余る涙はもる山の なげきに落つる雫なりけり
- 次の歌
-
かやぶきのこや忘らるるつまならむ ひさしく人の音づれもせぬ