かやぶきのこや忘らるるつまならむ
ひさしく人の音づれもせぬ
- 歌の意味
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萱葺きの小屋ではないが、これが忘れられる妻というものなのだろうか。廂ではないが、久しくあの人の訪れもないことだ。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 449
これが忘れられる妻というものなのだろうか、久しくあの人の訪れもない、と詠む歌である。萱葺きの小屋、軒の端、廂と、粗末な家にかかわる語を掛詞で連ねて、訪れの絶えた男を待つわびしさを表している。
本巻の第四百三十六首も「ひさし」「つま」を掛詞として詠んでおり、本歌と対をなしている。その歌がかりそめの夫と見放す側から詠むのに対し、本歌は忘れられた妻の側から嘆いており、構図が反転している。
初句「かやぶきの」は、萱で屋根を葺いたの意で、二句の「こや」を導いている。
二句「こや忘らるる」の「こや」は、萱葺きの「小屋」と、これがの意の「此や」とを掛けており、平仮名のままとした。係助詞「や」は三句の「む」と係り結びをなしている。
三句「つまならむ」の「つま」は、軒の端の意の「端(つま)」と、配偶者の「妻」とを掛けており、平仮名のままとした。断定の「なり」の未然形に推量の「む」の連体形が付き、二句の「や」を受けて結んでいる。ここで句切れとなる三句切れの歌である。本巻の第四百三十六首の結句「つまとこそ見れ」も同じ掛詞である。
四句「ひさしく人の」の「ひさし」は、時が「久し」の意と、軒の「廂」とを掛けており、平仮名のままとした。本巻の第四百三十六首の二句「ひさしに葺ける」も同じ掛詞である。
結句「音づれもせぬ」は、訪れもないの意で、打消の「ず」の連体形「ぬ」で結び、余情を残している。
かやぶき:萱で屋根を葺くこと
こや:萱葺きの「小屋」と、「此や(これが)」を掛ける
つま:軒の「端」と、配偶者の「妻」を掛ける
ひさし:時が「久し」の意と、軒の「廂」を掛ける
おとづる:訪れる、便りをする
- 出典
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