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漏らさばや細谷川の埋もれ水
影だに見えぬ恋に沈むと

歌の意味
あの人に漏らし伝えたいものだ。細い谷川の、草木に埋もれた水のように、姿さえ見えない恋に沈んでいると。
鑑賞
巻第八 恋歌下 478

 細い谷川の草木に埋もれて流れる水のように、相手の姿さえ見ることのできない恋に沈んでいると、せめて打ち明けたい、と詠む歌である。人目につかない埋もれ水に、表に出せずに思い沈む恋を重ねている。
 本巻の第四百五十八首の「忘れ水」と同じく、人知れぬ水に恋を重ねる趣向である。巻第七の第三百八十二首の「谷の下水」とも通じている。

 初句「漏らさばや」は、漏らし伝えたいものだの意で、願望の終助詞「ばや」を用いた初句切れの歌である。倒置により結句の「沈むと」へと続く。「漏らす」は水が漏れる意を響かせ、三句の「埋もれ水」と縁語をなしている。
 二句「細谷川の」は、細い谷川のの意である。
 三句「埋もれ水」は、草木や落ち葉に覆われて隠れて流れる水の意で、上三句が人知れぬ恋をたとえている。
 四句「影だに見えぬ」は、姿さえ見えないの意で、水に影が映らないことと、恋人の姿を見られないこととを重ねている。副助詞「だに」は最小限を表す。
 結句「恋に沈むと」は、恋に沈んでいるとの意で、「沈む」は水の縁語であり、初句の「漏らさばや」に返る倒置の形である。

もらす:秘めた思いを人に知らせる。水が漏れる意を響かせる
うもれみづ:草木などに覆われて隠れて流れる水
作者
よみ人しらず
出典
金葉和歌集
前の歌
早くより浅き心と見てしかば 思ひ絶えにき山川の水
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君こそは一夜めぐりの神と聞け 何逢ふことの方違ふらむ