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恋しさを妹知るらめや旅寝して
山の雫に袖濡らすとは

歌の意味
この恋しさを、いとしい人は知っているだろうか。旅先で寝て、山の雫に袖を濡らしているとは。
鑑賞
巻第八 恋歌下 482

 旅先で寝て、山の木々から落ちる雫に袖を濡らしているこの恋しさを、あの人は知っているだろうか、と詠む歌である。旅寝の袖を濡らす山の雫に、都に残した恋人を思う涙を重ねている。
 前歌の第四百八十一首と同じく「袖濡らす」の語で結ばれている。巻第七の第三百八十五首、第四百五首にも旅寝の恋が詠まれている。
 作者の「顕季」は、藤原隆経の子で、修理大夫に至った藤原顕季である。六条藤家の祖で、白河院の近臣として仕え、歌人として活躍した。

 初句「恋しさを」は、この恋しさをの意である。
 二句「妹知るらめや」は、いとしい人は知っているだろうかの意で、現在推量の「らむ」の已然形「らめ」に係助詞「や」が付いて問いかけを表し、ここで句切れとなる二句切れの歌である。倒置により下の句の内容を知っているかと続く。
 三句「旅寝して」は、旅先で寝ての意である。
 四句「山の雫に」は、山の木々から落ちる雫にの意で、涙を重ねている。
 結句「袖濡らすとは」は、袖を濡らしているとはの意で、前歌の第四百八十一首の結句「袖濡らすらむ」と同じ語を用いている。

いも:男性から恋人や妻を親しんで呼ぶ語
たびね:旅先で寝ること
作者
藤原顕季
出典
金葉和歌集
前の歌
うらむともみるめもあらじものゆゑに 何かはあまの袖濡らすらむ
次の歌
恨むなよ影見えがたき夕月夜 おぼろけならぬ雲間待つ身ぞ