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恨むなよ影見えがたき夕月夜
おぼろけならぬ雲間待つ身ぞ

歌の意味
恨まないでほしい。光の見えにくい夕月夜の月のように、私はなみなみでない雲の切れ間を待っている身なのだから。
鑑賞
巻第八 恋歌下 483

 光の見えにくい夕月夜の月が、よほどの雲の切れ間を待たなければ姿を見せないように、私も並々でない機会を待っている身なのだから、恨まないでほしい、と詠む歌である。すぐには逢えない事情を、雲に隠れがちな夕月にたとえて相手をなだめている。
 次歌の第四百八十四首は同じ「おぼろけならぬ」の語を用い、三日月が雲を割って出るように、並々でない恋しさに雲の上を抜け出してきたと詠んでおり、二首は月と雲をめぐって呼応している。
 作者の「祐子内親王家紀伊」は、後朱雀天皇の皇女祐子内親王に仕えた女房である。母も祐子内親王に仕えた小弁で、小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「恨むなよ」は、恨まないでくれの意で、禁止の終助詞「な」に間投助詞「よ」が付き、初句切れとなる。
 二句「影見えがたき」は、光が見えにくいの意である。
 三句「夕月夜」は、夕方に出る月の意で、自分の身をたとえている。本巻の第四百二十七首の「夕づく日」と同じく、夕暮れの景物である。
 四句「おぼろけならぬ」は、並々でないの意で、次歌の第四百八十四首の二句と同じ語である。
 結句「雲間待つ身ぞ」は、雲の切れ間を待つ身なのだの意で、係助詞「ぞ」で強く言い切っている。雲間は逢う機会をたとえている。

ゆふづくよ:夕方に出る月、夕月夜
くもま:雲の切れ間
作者
祐子内親王家紀伊
出典
金葉和歌集
前の歌
恋しさを妹知るらめや旅寝して 山の雫に袖濡らすとは
次の歌
三日月のおぼろけならぬ恋しさに われてぞ出づる雲の上より