人知れずなき名はたてど唐衣
重ねぬ袖はなほぞ露けき
- 歌の意味
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知らぬ間に、ありもしない浮名は立ってしまったが、唐衣の袖を重ねて共寝したわけでもないこの袖は、やはり涙に濡れていることだ。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 486
共寝もしていないのにありもしない浮名が立ってしまったが、唐衣の袖を重ねることもないこの袖は、やはり涙に濡れている、と詠む歌である。立つと裁つ、唐衣、重ね、袖と衣の縁語を連ね、根も葉もない噂に苦しみながら、なお実らない恋に泣く身を表している。
本巻の第四百三十三首も「唐衣」と「たち」の掛詞を用いて、袖の濡れを詠んでいる。
初句「人知れず」は、人に知られずの意である。本巻の第四百六十七首の初句と同じ語である。
二句「なき名はたてど」の「たて」は、浮名を「立て」の意と、三句の「唐衣」の縁で衣を「裁て」の意とを掛けており、平仮名のままとした。「なき名」は事実無根の浮名をいう。逆接の接続助詞「ど」を用いる。
三句「唐衣」は中国風の美しい衣で、「裁つ」「重ね」「袖」と縁語をなしている。
四句「重ねぬ袖は」は、重ねていない袖はの意で、男女が袖を重ねて共寝することがないことをいう。
結句「なほぞ露けき」は、やはり涙に濡れていることだの意で、係助詞「ぞ」を連体形「露けき」で結んでいる。
なきな:事実無根の浮名
たつ:浮名を「立つ」意と、衣を「裁つ」意を掛ける
からころも:中国風の美しい衣
- 出典
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金葉和歌集
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逢はぬ間はまどろむことのあらばこそ 夢にも見きと人に語らめ
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あぢきなく過ぐる月日ぞ恨めしき 逢ひ見しほどを隔つと思へば