こりつむるなげきをいかにせよとてか
君にあふこのひとすぢもなし
- 歌の意味
-
切り集めて積み重ねた投げ木のような嘆きを、どうせよというのか。それを担う天秤棒が一本もないように、あなたに逢う機会が一度もない。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 494
樵って積み上げた投げ木のように重なる嘆きを、いったいどうしろというのか、それを担う天秤棒が一本もないように、あなたに逢う機会が一度もない、と詠む歌である。樵る、投げ木、天秤棒、一筋と、薪を担ぐことにかかわる語を掛詞で連ね、逢えない恋の嘆きを機知的に表している。
本巻の第四百九十八首、第四百九十九首も「なげき」「こる」を掛詞として詠んでおり、薪にかかわる語で恋の嘆きを詠む一連をなしている。
初句「こりつむる」の「こり」は、木を「樵り」の意と、恋に「懲り」の意とを掛けており、平仮名のままとした。切り集めて積み重ねるの意である。
二句「なげきをいかに」の「なげき」は、「嘆き」と、薪にする木の「投げ木」とを掛けており、平仮名のままとした。
三句「せよとてか」は、せよというのかの意で、係助詞「か」は問いかけを表している。
四句「君にあふこの」の「あふこ」は、君に「逢ふ期」の意と、荷を担う天秤棒の「あふこ」とを掛けており、平仮名のままとした。本巻の第四百九十八首の初句「あふこなき」も同じ掛詞である。
結句「ひとすぢもなし」の「ひとすぢ」は、天秤棒の一本の意と、ひとつの手だての意とを重ねている。
こる:木を「樵る」意と、「懲る」意を掛ける
なげき:「嘆き」と、薪にする木の「投げ木」を掛ける
あふこ:「逢ふ期」と、荷を担う天秤棒の「あふこ」を掛ける
ひとすぢ:天秤棒の一本の意と、ひとつの手だての意を重ねる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
み熊野に駒のつまづく青つづら 君こそ我がほだしなりけれ
- 次の歌
-
津の国のまろやは人をあくたがは 君こそつらきせぜは見えしか