玉津島岸打つ波の立ち返り
せないでましぬ名残さびしも
- 歌の意味
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玉津島の岸を打つ波が寄せては返すように、夫は帰っていってしまった。その名残がさびしいことだ。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 510
玉津島の岸を打っては返す波のように、夫は帰って行ってしまった、その後の名残がさびしい、と詠む歌である。万葉集に見られるような古風な言葉を用いて、女の立場から、去っていった男を慕う心を表している。
作者の「顕季」は、藤原隆経の子で、修理大夫に至った藤原顕季である。六条藤家の祖で、白河院の近臣として仕え、歌人として活躍した。
初句「玉津島」は、紀伊の和歌の浦にある歌枕である。上二句は三句の「立ち返り」を導いている。
二句「岸打つ波の」は、岸に打ち寄せる波のの意である。
三句「立ち返り」は、寄せては返すようにの意で、波が返ることと、男が帰っていくこととを重ねている。
四句「せないでましぬ」は、夫は行ってしまわれたの意で、「せな」は女性から夫や恋人を親しんで呼ぶ語、「いでます」は行くの尊敬語である。完了の「ぬ」で句切れとなる四句切れの歌である。
結句「名残さびしも」は、名残がさびしいことよの意で、詠嘆の終助詞「も」は万葉集に多い古風な用法である。
たまつしま:紀伊の和歌の浦にある歌枕
せな:女性から夫や恋人を親しんで呼ぶ語
いでます:「行く」「出づ」の尊敬語
なごり:去った後に残る気配や余韻
- 作者
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藤原顕季
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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数ならぬ身をうぢ川のはしばしと 言はれながらも恋ひわたるかな
- 次の歌
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逢ふことは舟人弱み漕ぐ舟の みをさかのぼる心地こそすれ