あさましやこは何事のさまぞとよ
恋せよとても生まれざりけり
- 歌の意味
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あきれたことだ。これはいったい何というありさまなのか。恋をせよといって生まれてきたわけでもなかったのに。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 515
あきれたことだ、これはいったい何というありさまなのか、恋をせよといって生まれてきたわけでもないのに、と詠む歌である。恋に取り乱す自分の姿にあきれ、恋のためにこの世に生まれたのではなかったと嘆いて、恋の苦しみを率直な口語調で表している。
本歌は巻第八恋歌下の巻末歌であり、本集の恋の部を締めくくる歌である。巻頭の第四百二十一首が、まだ打ち明けられない思いを春の空にゆだねて恋の始まりを詠んだのに対し、本歌は恋に翻弄された果ての嘆きで巻を閉じている。初句「あさましや」は、本巻の第四百二十八首の「あさましげ」、第四百六十三首の「あさましく」と同じ語であり、巻第七の第三百七十二首、第三百九十六首の初句とも同じである。
作者の「俊頼」は、大納言源経信の子で、白河院の命を受けて本集を撰進した源俊頼である。
初句「あさましや」は、あきれたことだの意で、詠嘆の間投助詞「や」で句切れとなる初句切れの歌である。巻第七の第三百七十二首、第三百九十六首も同じ初句で始まっている。
二句「こは何事の」は、これはいったい何ということのの意で、「こ」はこれの意である。
三句「さまぞとよ」は、ありさまなのかの意で、係助詞「ぞ」に格助詞「と」、間投助詞「よ」が付いた口語的な言い回しで、三句切れとなる。
四句「恋せよとても」は、恋をせよといってもの意である。
結句「生まれざりけり」は、生まれてきたのではなかったのだの意で、打消の「ず」に詠嘆の「けり」が付き、気づきの嘆きで巻を結んでいる。
さま:ありさま、様子
- 作者
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源俊頼
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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我が恋は賤のしけ糸筋弱み 絶え間は多くくるは少なし
- 次の歌
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神垣に昔我が見し梅の花 ともに老い木となりにけるかな