うらやまし憂き世を出でていかばかり
隈なき峰の月を見るらむ
- 歌の意味
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うらやましいことだ。つらいこの世を出て、どれほど曇りのない峰の月を見ていることだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 538
つらい世を捨てて出家したあなたは、どれほど曇りのない峰の月を眺めていることだろう、うらやましいことだ、と詠む歌である。出家して山に入った人に贈った歌とみられる。「隈なき峰の月」は、煩悩の曇りのない悟りの心や仏の教えをたとえており、世を捨てた人の澄んだ境地をうらやんでいる。
次歌の第五百三十九首は本歌に答えた歌で、二首で贈答をなしている。前々歌の第五百三十六首が木の間から漏れるかすかな月を詠んだのに対し、本歌は隈なく照る峰の月を詠んでおり、月の明暗が対照をなしている。
初句「うらやまし」は、うらやましいことだの意で、形容詞の終止形で言い切る初句切れの歌である。
二句「憂き世を出でて」は、つらい世を出ての意で、出家することをいう。
三句「いかばかり」は、どれほどの意で、結句の「らむ」と呼応している。
四句「隈なき峰の」は、曇りのない峰のの意で、「隈なし」は陰りや曇りがないことをいう。次歌の第五百三十九首の四句にも同じ「隈なき峰」が用いられている。
結句「月を見るらむ」は、月を見ていることだろうかの意で、現在推量の「らむ」が、遠く山にいる相手の様子を思いやっている。
くま:陰になった所、曇り
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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春日山峰続き照る月影に 知られぬ谷の松もありけり
- 次の歌
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もろともに西へや行くと月影の 隈なき峰を尋ねてぞ来し