琴の音や松吹く風に通ふらむ
千代のためしにひきつべきかな
- 歌の意味
-
琴の音は、松を吹く風の音に通い合っているのだろうか。千年も続く先例として引き、奏でるべきものであることだ。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌上 541
琴の音は松を吹く風の音に通い合っているのだろうか、千年も変わらない松にちなんで、長寿の先例として引き合いに出し、奏でるべきものだ、と詠む歌である。琴の音と松風との通い合いを詠み、千年の齢を保つ松に寄せて、琴を奏でる人や催しの長久を祝っている。
『拾遺和歌集』の斎宮女御の「琴の音に峰の松風かよふらしいづれのをより調べそめけむ」を踏まえ、琴の音と松風とが通い合うという趣向を受け継いでいる。本巻の第五百四十二首、第五百四十三首も琴の音が「通ふ」と詠んでおり、琴を主題とする歌が三首並んでいる。
初句「琴の音や」は、琴の音はの意で、係助詞「や」は疑問を表し、二句の「らむ」と係り結びをなしている。
二句「松吹く風に」は、松を吹く風にの意で、松風の音をいう。
三句「通ふらむ」は、通い合っているのだろうかの意で、現在推量の「らむ」の連体形で、初句の「や」を受けて結び、ここで句切れとなる。次歌の第五百四十二首の結句「通ひけるかな」、第五百四十三首の三句「通へばや」と同じ語を用いている。
四句「千代のためしに」は、千年も続く先例としての意で、千年の齢を保つ松にちなんでいる。
結句「ひきつべきかな」の「ひき」は、例として「引く」意と、琴を「弾く」意とを掛けており、平仮名のままとした。強意の「つ」に当然の「べし」、詠嘆の「かな」が付いている。
ひく:例として「引く」意と、琴を「弾く」意を掛ける
ためし:先例、手本
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
早くより頼みわたりし鈴鹿川 思ふことなる音ぞ聞こゆる
- 次の歌
-
うれしくも秋の深山の秋風に うひ琴の音の通ひけるかな