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うれしくも秋の深山の秋風に
うひ琴の音の通ひけるかな

歌の意味
うれしいことに、秋の奥山を吹く秋風に、初めて弾いた琴の音が通い合ったことだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 542

 うれしいことに、秋の奥深い山を吹く秋風に、初めて弾く琴の音が通い合った、と詠む歌である。初めて琴を奏でた折に、その音が山の秋風と響き合ったことを喜んでいる。前歌の第五百四十一首の、琴の音と松風が通い合う趣向を受け、初めての琴の演奏を祝う心が込められている。
 第五百四十一首から第五百四十三首まで、琴の音が「通ふ」と詠む歌が三首続いている。前歌が松風に、本歌が秋風に、次歌が月の光に琴の音が通うと詠み、通い合う相手を変えて並べている。

 初句「うれしくも」は、うれしいことにの意である。
 二句「秋の深山の」は、秋の奥深い山のの意で、「深山」は奥山をいう。
 三句「秋風に」は、秋風にの意で、二句の「秋」と同じ語を重ねている。前歌の第五百四十一首の二句「松吹く風に」に対応している。
 四句「うひ琴の音の」は、初めて弾く琴の音のの意で、「うひ」は初めての意を表す接頭語である。
 結句「通ひけるかな」は、通い合ったことだの意で、過去の「けり」の連体形に詠嘆の「かな」が付いている。前歌の第五百四十一首の三句「通ふらむ」を受けている。

みやま:奥深い山
うひごと:初めて琴を弾くこと
出典
金葉和歌集
前の歌
琴の音や松吹く風に通ふらむ 千代のためしにひきつべきかな
次の歌
琴の音は月の影にも通へばや 空に調べの澄みのぼるらむ