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長居する海人のしわざと見るからに
袖の浦にも満つ涙かな

歌の意味
長居をする海人のしわざだと見るとすぐに、袖の浦にも潮が満ちるように、涙があふれることだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 552

 長く居続ける海人のしわざだと見るやいなや、袖の浦に潮が満ちるように、わが袖にも涙があふれてくる、と詠む歌である。海人の営みに寄せて、ある人の振る舞いを見て涙を流す心を詠んでおり、前歌の第五百五十一首に答えた歌とも読める。
 前歌の第五百五十一首と同じく、海辺の語を連ねて別れや悲しみの思いを表している。「袖の浦」は出羽国の歌枕で、涙に濡れる袖を表す語として用いられている。

 初句「長居する」は、長く居続けるの意である。
 二句「海人のしわざと」は、海人の仕業だとの意で、漁をする海人の営みをいう。
 三句「見るからに」は、見るやいなやの意で、接続助詞「からに」が直後の結果を導いている。
 四句「袖の浦にも」は、袖の浦にもの意で、出羽国の歌枕「袖の浦」に、涙に濡れる袖を重ねている。
 結句「満つ涙かな」は、満ちる涙であることだの意で、潮が満ちることと涙があふれることを重ね、詠嘆の終助詞「かな」で結んでいる。「満つ」は四句の「浦」と縁をなしている。

あま:海で漁をしたり塩を焼いたりする人
しわざ:行い、仕業
そでのうら:出羽国の歌枕。涙に濡れる袖を重ねて詠まれる
出典
金葉和歌集
前の歌
磯菜摘む入江の波の立ち返り 君見るまでの命ともがな
次の歌
うたた寝の夢なかりせば別れにし 昔の人をまたも見ましや